まめ知識 : 一般的な作法・マナー

  屠蘇器(とそき)の使い方

屠蘇器(とそき)とは
  「屠蘇器」は、「屠蘇(とそ)」という薬酒を飲むための道具です。

  屠蘇を入れる「銚子(ちょうし)」、屠蘇を注ぐ「盃(さかずき)」、重ねた盃を載せる「盃台(さかずきだい)」、これらを載せる「屠蘇台(とそだい)」を一組にして「屠蘇器(とそき)」と呼びます。
  漆器製のものが一般的ですが、金属製や陶磁器製などもあります。使うときは、水引の「銚子飾り(ちょうしかざり)」を銚子に結びつけます。

  屠蘇ではなく酒を入れて、結納での「固めの杯」や、結婚式での「誓杯の儀」にも使います。
(正式には、結婚式で使うものは「銚子(ちょうし)」が2つ載っています)

  漆器の保管や洗い方については、【まめ知識 : 漆器の扱い方】を参考にして下さい。

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屠蘇(とそ)とは
  屠蘇は、1年間の邪気を払い長寿を願って正月に飲む 薬酒 のことです。
  薬酒は、「屠蘇散(とそさん)」という漢方の生薬をミックスしたものを、日本酒や赤酒(灰持酒)に味醂(みりん)や砂糖を加えたものに浸して作ります。
  「屠蘇散」は、正しくは「屠蘇延命散(とそえんめいさん)」と言い、一般的には5〜6種類、多くて10種類の生薬を混ぜて作ります。
  赤酒は熊本県に古来から伝わる酒で、屠蘇やお神酒に使うほか、味醂のかわりに料理酒としてもよく使います。

  「屠蘇」という漢字は、「屠」は「屠(ほふ)る」、「蘇」は「病をもたらす鬼」という意味で、すなわち鬼退治。あるいは「屠」は「邪気を払う」、「蘇」は「魂を目覚め蘇らせる」という意味にとるなど、微妙に違う解釈がいくつかあるようです。

  「屠蘇」の行事は、中国では唐の時代から始まり、日本では平安時代が始まりとされています。
  三国時代の魏の名医・華蛇(かだ)が考案したという説が有力で、唐代に仙人が考案したのだ、という説もあります(仙人の住んでいた洞窟が「屠蘇庵」というので「屠蘇」といいます)。
  ちなみに、現在の中国では、屠蘇の風習は廃れてしまったようです。

  江戸時代には、医者が薬代のお礼にと屠蘇散を配っていたそうで、庶民にも屠蘇が広まりました。
  昔から「一人これを飲めば一家病無く、一家これを飲めば一里病無し」と言われ、正月の祝いの膳には欠かせないものとなっています。

  「屠蘇散」の中身は、漢方に使われる生薬を混ぜ合わせたもので、時代や地域によって異なります。現在では、「山椒(サンショウ)・細辛(サイシン)・防風(ボウフウ)・肉桂(ニッケイ)・乾薑(カンキョウ)・白朮(ビャクジュツ)・桔梗(キキョウ)」を用いるのが一般的です。
  現在では、「屠蘇散」の入っていないお酒を「お屠蘇」と称して正月の祝い酒にしている場合も多いですが、これは間違ったやり方です。


屠蘇の作り方
  屠蘇の入手方法・作り方は簡単です。
  「屠蘇散」は、ティーバッグ型になっており、現在でも、年末近くになると一部の薬局・薬店で販売されています。インターネットでも販売されているようです。年末近くに味醂を買うと、おまけとして付いている場合もあります。

  「屠蘇散」を準備したら、日本酒や味醂(本みりん)をコップなどの容器に注ぎ、袋に入った「屠蘇散」を大晦日の夜に浸けておきます。
  7〜8時間放置すると薬効成分が溶け出し、褐色かかった色になります。十分に溶け出したら袋を取り出します。
  出来上がったら味見をして、あまり飲みにくいようでしたら、酒や味醂や砂糖で味を調節してください。
  銚子に移し、元旦の朝に飲みます。

  • 日本酒や味醂の量が多い場合は、屠蘇散を長めに浸してください。
  • あまり長時間浸しすぎると濁ったり沈殿物ができる場合があります。
  • 日本酒で作るとドライなお屠蘇になります。味醂や赤酒を使うと、甘味が強くまろやかな味になり、お酒の弱い人でも飲みやすくなります。
  • 味醂に浸すのが一般的ですが、味醂だけだと甘すぎるので日本酒とブレンドするのがオススメです。屠蘇散を浸す前に、お好みで日本酒と味醂をブレンドして味を調節しておくと良いでしょう。
  • 屠蘇は薬草の香りとかすかな苦味があります。酒も味醂も良質なものを選ぶことが、爽快感のある飲みやすい屠蘇を作るコツです。
  • 本みりん以外にも貴醸酒など、米由来の上質な料理酒を使っても、美味しいお屠蘇ができます。
  • お好みで「陳皮(みかんの皮)」と「丁子(クローブ)」を加えると、フルーティでスパイシーな味になります。追加のスパイスは、砕いてから、だしパックの袋に入れて、一緒に浸します。
「屠蘇」の行い方
  あらかじめ、作っておいた屠蘇を銚子に移し、銚子に「銚子飾り」を結び付けておきます。
  「銚子飾り」は、「雄蝶(おちょう)」と「雌蝶(めちょう)」の2ヶで一対です。
  「雄蝶」は、折型の上部が閉じています。銚子のツルの前側につけます。
  「雌蝶」は、折型の上部が開いています。銚子のツルの後側につけます。

  元日の朝、家族揃って祝い膳を囲み、新年のあいさつを交わしたのち、無病息災を願って屠蘇を 年少者から年長者へ 順に飲みます。
  通常は略式として、中盃(2番目の盃)のみを使いますが、正式には「屠蘇三献(とそさんこん)」といい3つの盃すべてを使います。
  「屠蘇三献」で行う場合は、一人が三つの盃を上から順に飲み干し、次の人にまわします。

略式の手順は次の通りです。
  1. 年長者(家長)が、家族へすすめます。
    飲み手が家長の正面に座り、お互いに一礼します。家長が盃台ごと持ち上げます。
  2. 飲み手は、持ち上げられた盃台から盃を取ります。
    略式の場合は、大盃と小盃を屠蘇台へ戻し、中盃だけを手に取ります。
  3. 家長は、盃台を屠蘇台へ置き、銚子を持って、飲み手の盃へ屠蘇を注ぎます。1つの盃に対し3回注ぎます(1、2回は真似だけ。3回目で注ぎます)。
    飲み手は三口で飲みます。一口・二口目は少し飲み、三口目で飲み干します。
  4. 家長は、銚子を屠蘇台へ置き、再び盃台を取ります。
    飲み手は、盃を盃台へ戻します。
  5. 家長は盃台を屠蘇台へ戻し、お互いに一礼します。
    続けて次の人にすすめる場合は、中盃だけが盃台に乗った状態のままで行います。次の飲み手が家長の正面に移動します。2人目からは、小盃・大盃を動かす必要はありません。
  なお、行い方は、都合に応じてアレンジしても大丈夫です。
  元旦の朝に、起きた都合で家族がそれぞれ家長に年始のあいさつを行い、そこで家長があいさつを返したのち、屠蘇を注いですすめる、というのが行いやすいと思います。
  予備の盃(陶器などでも構いません)を用意して、家族が同時に乾杯をしてもよいでしょう。
  お酒が飲めない方やお子様は盃に口をつけ、飲むまねごとだけでも結構です。
伝統的な屠蘇の作法
  伝統的な作法の一例です。この通り行う必要はありませんが、ご参考までに。
  1.   大晦日の晩に、屠蘇散が入った袋を井戸の内側に吊るしておきます。この袋は、三角形に縫った赤い絹の袋です。一晩吊り下げられた屠蘇散は、元旦の早朝に取り出して、酒もしくは味醂に浸します。
  2. ◆ お屠蘇を飲む ◆
      元旦の朝、若水(元旦の早朝に汲んだ水)で身を清め、初日や神棚、仏壇などを拝んだあと、家族全員そろって新年の挨拶を行います。
      その後、雑煮やおせち料理をいただく前に、お屠蘇を飲みます。そのとき使われる酒器は、朱塗りまたは白銀や錫などのお銚子と、朱塗りの三段重ねの盃を使います。
      お屠蘇をいただくときは、一家揃って東の方角を向きます。
      盃は、年少者から年長者へと順にすすめます。若者の精気を年長者に渡すという意味合いが含まれています。
      飲むときには「一人これを飲めば一家病無く、一家これを飲めば一里病無し」と唱えます。
  3. ◆ その後のお屠蘇 ◆
      正月三が日(1/1〜1/3)の来客には、まず、初献にお屠蘇をすすめて新年のお祝いの挨拶を交わします。
      そして、松の内(1/15まで、地域によっては1/7まで)が過ぎたら袋の中の薬滓を、元の井戸の中に投げ入れます。この井戸水を飲めば一代の間、無病でいられるとされています。

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